第二章-神殿跡地-
潮風が吹き込む貿易港の都市、トレース。
貿易商人や旅人などで活気あふれる昼の港の一角にあるパブの中。
ノウェ達、旅の一行は遅めの昼ご飯を食べながら今後の話をしていた。
「俺たちは古代遺跡とかから調べていこうかと思ってローランド大陸南にある遺跡に行こうと思ってた」
話を切り出したのは、ノウェだった。
パンを丁寧にちぎり、魚介スープに浸しながら詳細を話し始める。
「南の遺跡といえば…太陽神が祀られていたとされる神殿跡地のことかしら。どうしてあそこに?」
海藻が散りばめられたサラダをちょいちょいとつつきながらエリナが尋ねる。
あ…という彼女の持つフォークからトマトが逃げた。
ノウェはその様子に気がつかなかったのか、パンを咀嚼し飲み込んでからエリナに答えた。
「俺も詳しいことはわからないんだけど、零の輝石求めている奴が異例の炎魔法を使っているとかで
炎魔法について何か詳しいことが載ってないか遺跡の古代語とかないか調べようかと思ってさ…」
「太陽神は人類に火魔法を教えた神様って伝えられてるしねぇ〜」
昼間から酒を一気飲みするクロスがノウェの横でニヘラニヘラと続いた。
それを見たノウェはあからさまにわかるように、ため息をついた。
「ちょっと…なんでそこでため息ついちゃうのノウェ」
「あのなぁ…昼間っから酒飲んでるんじゃねーよ」
「いーじゃないの。俺様酒には強いし。それにほら!快気祝い!」
ニコッと笑むとクロスはそのままジョッキに入っている蒸留酒を一気飲みする。
その飲みっぷりにエリナはポカーンとし、レンはそんなエリナを不思議そうに見た。
その様子を見てさらにノウェが呆れて首を横に振った。
「快気祝いっていうのはなぁ…って、そんなことよりだ。俺たちはさっき言った理由がもとで神殿跡地へ行こうと思うんだ」
話を戻されて、我に返ったエリナがなるほど…と首を縦に振った。
一方レンはクロスが一気に酒を飲むさまを見て、僕も僕もーとクロスに言ってる最中だった。
「僕もそれぐらいだったらいけると思うから僕も注文していいかな」
「あー、これはなぁ、大人の飲み物だからお子様はだーめ」
「えー…、こう見えて結構生きてるんだけどなぁ」
レンが珍しく食い下がらない。しかしクロスはニコーっと笑うとやっぱりノーを出した。
「生きてようとそれは年月だけだろー。ちゃんと大人になってからじゃないと成長しなくなるぜ」
俺様ぐらいに大きくならないと、と続けるとレンはしょんぼりしながらも食い下がった。
そのやり取りを見ながらエリナはノウェに話の続きをした。
「ノウェ達の言う悪い人(?)が存在しないはずの炎魔法を使っているって話は初耳だったから驚いたわ。
けれど、そういう理由なら神殿跡地へ行ってみてもいいかも!さっそくこれ食べたら出かけましょ!」
今度はトマトを逃がさず、うまくとって口に運ぶとエリナは嬉しそうににっこりとほほ笑んだ。
クロスはレンとやり取りを交わしながらも、ノウェ達の話を聞いていたようで新たに酒を用意しながら話に入り込んできた。
「太陽神殿跡地行くので決まりとして、エリナちゃんは別に行くあてとかなかった感じ?」
「私はここから船でローランド大陸の王都へ行こうと思ってたわ」
「王都っていうと…グランドウェイルか」
「そうよ。あそこはこの大陸の中で一番大きいところだから何か情報を得られないかなってね」
でもノウェ達の情報のほうが気になるからそっちを優先にしようかと思ってる、と付け足した。
クロスはクロスで、「それはよかった船に乗ることになったら俺様大変だし」と満足げにニコニコしている。
「それじゃあ今からその遺跡?とやらに出かけるんだね。どんなところだろう、楽しみ」
レンは遺跡に行くことが楽しみでしかたないらしい。
昔の人が作った建物が今も残るなんてすごいんだろうな等と呟きながらもとても嬉しそうだ。
ノウェは話の収集がついたのを納得したように見て、クロスをちらりと見た。
クロスは相変わらずジョッキを片手にニヤニヤしていたが、ノウェの視線を見ると軽くウインクで返した。
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